モデル空間に作図することを基本として、ビューポートを使ってペーパー空間に抜き出す。

このやり方は、考え方としては正解と言えると思いますが、あまりにもそのルールに縛られすぎると逆に窮屈になります。

何が何でもビューポートで抜き出すべき。

……というような縛りがあることによって、オートキャド(AutoCAD)の使い方に工夫の余地がなくなる訳です。

自分のやり方を固定した瞬間から、やるべき事は「いつものやり方を繰り返す」というルーチンだけ。

単なるルーチンをこなすだけという仕事をしていたら、進歩とか改善などという言葉とは縁が遠くなってしまいます。

進歩がないと言うことはつまり、周囲が進歩している中にあっては、停滞ではなく後退を意味します。

それではオートキャド(AutoCAD)のプロとしてしっかりとやっていくことなど出来ません。

常にその状況に応じた方法を考えていく。

そうした習慣を付けておくことが、長くプロを続けていく為には必要じゃないか、と私は思っています。

さて……

今回紹介するやり方は、モデル空間に線や円などを作図して、文字・寸法のみペーパー空間で記入する、というものです。

ちょっと特殊なやり方ではありますが、そこにはどのようなメリットがあるのかを一緒に考えてみましょう。


■縮尺と文字サイズの関係

このやり方も基本的な作図はモデル空間で行うことになりますが、文字と寸法は別途ペーパー空間に記入していきます。

こんなやり方をしたら面倒なだけじゃないか、と思われる方もいるかも知れませんが、メリットはきちんとあるんです。

それは、文字の大きさを考えずに図面を描くことが出来る、というところ。

オートキャド(AutoCAD)で図面を描く際には、作図対象をそのままの大きさで描くのが基本になります。

ただ、図面として表現をする際には、どんな縮尺で作図するかを意識して、その縮小率を考慮した文字の大きさにする必要があります。

縮尺1/50の図面にする場合には、印刷時に1/50倍されるというのが縮尺の基本的なルールです。

だから印刷したい文字サイズの50倍、3mmの文字なら150mmの文字サイズに設定しておく必要がある訳です。

もちろんこうしたやり方も、オートキャド(AutoCAD)の操作に慣れていて、図面の縮尺さえ意識出来ていれば特に問題はありません。

ただしその為には、図面を描く時にはもう縮尺を決めておいて、その想定した縮尺にマッチした文字の大きさで作図をする必要があります。

 

■後回しが正解?

しかし、モデル空間には作図要素を、ペーパー空間には文字と寸法を記入するやり方を採れば、そうした問題は解決します。

線や円などの作図要素だけをモデル空間に作図して、文字のサイズは後から考えても大丈夫だから。

ペーパー空間上で文字や寸法を記入する段階になって、ようやく文字の大きさなどを決めてもOKです。

面倒な事を後回しにすることが、本当に良い事なのかどうか、という話も当然あるんですけど……

ひとまず文字の大きさを考えずに作図が出来るというのは、それだけでも結構なメリットではないかと思います。