作図した要素を部分的に抜き出してレイアウトする、というペーパー空間の概念はオートキャド(AutoCAD)特有のものです。
これは確かに便利な機能であり、この概念がないCADに比べて操作の選択肢が増えることは確実です。
ただし、世の中にある企業が全てオートキャド(AutoCAD)を使っている訳ではありません。
世の中には本当に色々な種類のCADが存在していて、それぞれ得意分野を持って展開をしている訳です。
そうした色々な種類のCADとデータをやりとりする為には、データの変換という作業が必要になってきます。
一般的なデータの変換は、DXF形式と呼ばれる中間ファイル形式のデータを仲介して行われます。
例えばオートキャド(AutoCAD)で作図した図面をJwCADで開きたい場合があったとします。
そうすると、まずはオートキャド(AutoCAD)のデータを、DXF形式のデータに書き出す操作をします。
通常のオートキャド(AutoCAD)データはJwCADでは開けませんが、DXF形式のデータならば開くことが可能なんです。
こうして、DXF形式という「どのCADでも開けるデータ」を仲介して、別のCADデータを開くことが出来る、という流れです。
■オートキャド(AutoCAD)特有の機能
DXF形式という中間ファイルを利用したデータ変換は、実際の仕事では欠かすことが出来ない便利な機能です。
文字がズレたり寸法がバラバラになったりという問題はありますが、作図された線などは確実に変換されます。
異なるCADで作図した要素でも開くことが出来る、というのは業務の効率化に大きく貢献するはず。
しかし……
他のCADで開くことが出来るようになるというのは、確かに便利なことではあるんですが、万能の機能ではありません。
どのCADでも開けるような状態というのはつまり、そのCAD特有の機能は失われてしまうということ。
もちろんペーパー空間とかビューポートの概念も、オートキャド(AutoCAD)特有の機能に該当します。
だから、他のCADに変換をする場合には、せっかく綺麗にレイアウトした図面が、綺麗になくなってしまうことになります。
■実際に変換してみると
この変換作業を実際に試してみると、まずはペーパー空間でこのようにレイアウトした図面があったとします。
このデータをオートキャド(AutoCAD)でDXF形式に「名前を付けて保存」すると、このようなファイルが作成されます。
dwg形式がオートキャド(AutoCAD)の図面で、dxf形式が変換用の図面ファイルになります。
このdxf形式のデータをJwCADで開いてみると……
モデル空間に作図した図面はきちんと変換されました。
これは素晴らしいことですが、残念ながらペーパー空間に記入していた図面枠やビューポートなどは、どこを探してもありませんでした。
この「他のCADにない概念だから、変換が出来ない」という点が、ペーパー空間の大きな欠点だと言えるでしょう。