ペーパー空間でレイアウトした図面の状態を、dxf変換で他のCADに持っていくには、単にそのままdxf形式で保存だけでは出来ません。
まずはペーパー空間をモデル空間に書き出す処理をして、そのデータをdxf変換することで、ようやく他のCADで開くことが出来ます。
その具体的な手順を前回は紹介しました。
実際にやってみるとよく分かりますが、ペーパー空間をモデル空間に書き出す作業はそれほど難しい作業ではありません。
それをdxf形式に保存するのも、保存したdxfデータを他のCADで開くのも、同じようにとても簡単です。
だとすれば、オートキャド(AutoCAD)でペーパー空間を使って作図した図面は、全て簡単に他のCADへと変換出来るのか。
……というと、まあ実際にはそう単純な話にはならないんですが、それはなぜか、という話を今回は考えてみます。
■意外に手間がかかる
まず、モデル空間への書き出し経由でdxfに変換すれば出来るのに、なぜ簡単にそれが出来ないのか、という話から。
モデル空間への書き出しも、そのデータをdxf形式に保存するのも、作業としてはそれほど難易度の高いものではありません。
それでも、そうした手順を全ての図面にやるべきかというと、それはそう簡単な話にはなりません。
それはなぜかと言うと、オートキャド(AutoCAD)の1ファイルに作成出来るペーパー空間の数が1つではないからです。
1つの図面データをdxf形式で保存する場合、当たり前の話ですが「名前を付けて保存」を1回やれば済みます。
でも、例えば1つの図面データに30のペーパー空間があって、それを全部個別にdxf形式で保存したい場合もあるでしょう。
その場合は「レイアウト-モデル変換」を30回繰り返し、オートキャド(AutoCAD)のファイルを30個作成する必要があります。
そして、それぞれのファイルをそれぞれdxf形式で保存してあげる、という手順がまだ残っています。
これは確かに簡単な操作ではありますけど、さすがに30回繰り返すにはそれなりの時間がかかります。
そこまでする必要があるか、というのはその状況によって異なってくるはずだし、どうしても必要な場合もあるでしょう。
しかし毎回dxf変換の時にその作業をやるのは、やはり仕事の作業効率としてはあまりお勧め出来ません。
■1ファイルの方が良い場合も
そしてもうひとつ、そうしてdxf変換したデータは結局30個の図面データに分割されることになります。
それぞれの図面ファイルで、図面レイアウトがきちんと出来た状態になる訳で、それはそれで悪いことではありません。
しかしオートキャド(AutoCAD)の特徴は「大きな作図対象でも1枚の図面ファイルで作成出来る」ことにあります。
それなのに、わざわざ手間をかけてまでして、バラバラの図面データに分けてしまうのは勿体ないです。
細切れになった図面では、編集する際にどの図面を開けば良いのかが分かりにくいし、重なっている部分の修正も面倒です。
そうした手間を省く為のペーパー空間という機能なのに、それを元に戻すのが良いのかどうか。
それならば、ペーパー空間は変換されないけれど、全体を表現したモデル空間を1ファイルでdxf変換した方が良い場合もあるはずです。
その方が手間がかからないのであれば、なおさら1ファイルの方が使い勝手は良いんじゃないか。
「レイアウト-モデル変換」は確かに便利な機能ですが、諸手を挙げてお勧め出来ない理由はそのあたりにあります。